<空想科学祭2009>レビュー/感想掲示板



[21] 「ラニーニャの卵」招夏 Name:空想科学祭2009 Date:2009/09/01(火) 17:41 [ 返信 ]
【題名】ラニーニャの卵
【あらすじ】ラニーニャ現象が起こった年の暑い暑い夏に起こった奇妙な現象。
雪村準教授の実験室に現れたそれは一体何だったのか。
ライトSFファンタジー
【名前】招夏
【URL】http://ncode.syosetu.com/n8697h/



[253] 無理をしないという清々しさ Name:秋は戻り鰹 Date:2009/10/04(日) 18:21
この作品、まずはジャンルを考えず読んで頂きたい。
ここは確かに空想科学祭であり、本作はその参加作である。作者は最初に「ライトSFファンタジー」と書いている。実に無邪気に・・・と考えるのもひとまず置いておいて。
なるほどライトでありファンタジーだ。例のCooやグレムリンなどを思い出す方もいよう。
犬がかなりの役どころに収まるのもこの企画では珍しい。何せ今のところ猫が主流である。そんなことを思いつつ、全てを読み終えてみれば、自分の創作スタイルにSFを充て込んで苦労する作者が散見する中にあって、あっけらかんとした実に清々しいほどの無理のなさ、背伸びのなさ、と感じるのは私だけだろうか?
突っ込むのならどうぞというくらいに突っ込みどころはある。一体いつ「SF」になるのだろう、と首を傾げるほど長い導入部。しかし、難しい方法をとった(視点チェンジ)にしては読者を躓かせる事なくなだらかに物語は進む。その清々しさは穢れがない、とも言え、それが現実感を失わせ、コミックタッチを強調させている。
確かにSFと呼ぶには無理があるだろう。だが、普段、ケータイ小説やらラノベやらに手を付けない私のような読者にとっては別の窓からの風景を見せて頂いたような経験だった。これも企画の一面であろう。


[260] RE:「ラニーニャの卵」招夏 Name:ラヒチ Date:2009/10/04(日) 19:20
これは不思議な作品でした。学者と家政婦、猛犬と新生命体、その関わり合いが、参考資料を下書きに組まれたハードな科学的設定を織り込みながら、穏やかな白昼のなかで語られていきます。謎の生命体ソーマが主人公たちに、自己存在に対する疑問を訴えかけてきますが、そこで言及される神に関しての考察が興味深かったです。ソーマとは別所で聞いたところ、古代インドに実在したとされる秘薬であったと聞きます。どんな病も癒す霊酒、はたまた副作用のないドラッグだったなどと読みましたが……。すべての生物が行き着く神は同一か?という形而上学的問答も提示されておりましたが、ソーマという東洋の仏教概念と、SFではよく土台にされる西洋のキリスト教的価値観、これらが混ざり合って独特の雰囲気を持っていたと思います。神を語るには東と西を併せて考える必要があるとも聞きました。
内容はかなり興味深かったです。しかし、タテ書きで読んだため、空行が気になりました。文章は悪くないのに、空行率の高さのせいで密度が低くなっていたと思います。だからといって空行をすべてカットした場合もやはり違和感は残るでしょう。一文一文の繋がりをもう少し強めて欲しかった、というのが本音です。また、作中一人称視点が人物毎に切り替わりますが、これは物語を多角的に見られるというメリットがある分、よほど軸をしっかりとさせていないと、読者の視点が定まらなくなるというデメリットがあります。いまのところ、わたしは多視点描写を怖くて使えません。一人称でも三人称でも、慣れるまでは人物ひとりに的を絞って書く方が、軸がぶれないことと思います。また、作者様は日常の描写が上手い、だからこそ特に前半部で散見された漫画的表現は使わない方が雰囲気を統一できるのでは、とも思いました。あくまでこの作品を読んだひとりの個人的な感想・意見であります。流して下さって構いません。
 ライトSFにありがちな、日常と非日常という境目を感じさせない、のびのびとしたお話でした。何故か読書中、とてもリラックス出来たことを最後に言い残し、光の速さで飛んで逃げたいと思います。


[264] RE:「ラニーニャの卵」招夏 Name:尚文産商堂 Date:2009/10/04(日) 21:14
宗教や哲学、科学、生命学など、現在の人間の知識欲を満たす学問は数多とあります。しかし、"命とは何か"や"人はどこから来て、どこへ行くのか"といった哲学的な問題に答えれるようなものは、いまだにありません。命という、抽象的なものを扱うものの一つに、宗教学がありますが、それによれば、神がすべてを作ったということになり現在の科学では否定されてしまいます。そのような矛盾をはらみながらも、新しい命は生まれて、そして消えてゆきます。それらすべてと感動と悲哀がうまく混じり合い、そこにコメディ風味の隠し味がいい味を効かせている作品だと思いました。

[278] 有機的ペレルマン Name:栖坂月 Date:2009/10/06(火) 13:59
柔らかい物語でした。
地に足の付いた文章、決して急がず、かつ驚きと起伏に富んだ展開、全体を眺めての完成度は極めて高いレベルにあると感じます。SF企画とか忘れちゃうくらい、しっかりしっとりと読ませていただきました。
題材も実に興味深く、空間や図形を数学的に解釈するトポロジー、長年数多くの数学者を悩ませて人生を棒に振ってきた難問ポアンカレ予想、そして何より変人というキーワードから、私個人はロシアの数学者ペレルマンを連想してしまい、それがより作品を奥深いものに見せてくれました。彼は孤高であり異端であり、ただ高みを目指す『綺麗な』人物です。そういった潔さは雪村先生にも通じますね。あるいは、狙ってのことかもしれませんが。そういえば、ペレルマンは数学者にとってのノーベル賞でもあるフィールズ賞を辞退していますが、ソーマという発見を棒に振って自らの思いを貫く辺り、そういったある意味においてワガママな気質が感じられなくもありません。
ただ、ペレルマンが孤高の、極めて無機的な天才であるのに対し、この雪村先生は有機的ですね。いや、そう変革されたと受け取るべきでしょうか。もちろん、話そのものも素晴らしいことは確かなのですが、どの辺りまでがそういった『数学的天才』に対する皮肉であるのかわからず、不必要に深読みしながら読んでしまいました。何にしても、色々な面において興味深かったです。
最後に文章に関してですが、身近なものを拾い上げて表現するのが実に上手いですね。招夏さんの性別が実際にどちらなのかはわかりませんが、極めて女性的な文章であったと感じました。私も、もう少し自分の足元をしっかり見詰める必要があるなーと、自戒しております。
それにしてもSF企画で泣かされるとは、不覚でした(笑)


[342] 感想 Name:中瀬美嘉 Date:2009/10/17(土) 01:08
 SF要素をうまく取り入れた恋愛ものだというのが読了直後の感想。私は理系ではないので難しい話はわからぬが、細かいところまでよく調べ上げ書かれていて、満足度は高い。
 人物がとにかく生き生きしていて気持ちがよかった。視点はコロコロ変わるが、饒舌な一人称で難なく読めた。ただ、あまりに唐突に切り替えられる箇所もあり、全く困惑しなかったわけではないと付け加えておく。
 既に別のレビュアーから指摘が出ていたが、改行は勿体ない。どういうスタイルを目指しているのかどうか私にはわからないが、書籍を読み慣れている読者からすれば読みにくいと言わざるを得ない。もしかしたら改行を増やさない方がもっと読みやすかったのではないかと、これは悔やまれる点だ。
 作品全体のSF度は薄いが、一つの物語としては完成度は高い方ではないだろうか。一つ一つのエピソードが最後にぐっと効いてくる。十分楽しませてもらった。


[398] RE:「ラニーニャの卵」招夏 Name:鳥野 新 Date:2009/10/20(火) 00:52
 ほんわかほのぼのと、ライトSFの王道を楽しませていただきました。
 教授と真夏が徐々に心を通わせていく部分の描写が心地よく、ソーマを加えた3人が家族のように暮らす場面は温かい気持ちになりました。
 ただ、作者も書かれていますが、このSFのSFの肝と言える試験管から生物が発生した過程はもう少しもっともらしく、または思いっきり奇想天外に書いたほうが良かったのではと思います。ちょっと中途半端な印象を受けました。(昔の記憶ですがPCRを行う場合のDNAポリメラーゼはマイクロピペットを使用してμℓ単位で入れて調整していたような)万が一DNAができたとしても、その後蛋白になる過程や、生命として形成される過程が必要ですので……。
 でも、本当にそんなことどうでもいいや、と思わせるほどの優しい物語で読後感が良かったです。


[568] RE:「ラニーニャの卵」招夏 Name:右野前条 Date:2009/10/29(木) 23:02
終始、頬を緩ませたまま、読み終えることができた。
生化学用語が乱舞するようなSF的重厚感はないが、この穏やかで柔らかい筆致を思えば、それが正解であったように思える。
所謂ところのライトな文章にありがちの砕け過ぎた感もなく、安定して読むことが出来る。
結末もまた王道(まあ、二人の擦れ違いのネタ明かしには、やや苦笑を浮かべたが)で、全体を通して一貫した雰囲気を損なわないまま、綺麗に纏め切っている。

難があるとすれば、既に指摘があるように、
物語が動き始めるまでの展開にやや冗長さを感じる点と、頻繁な視点切替による混乱はやや気に掛かることだろうか。

いずれにせよ、清々しい読後感を与えてくれる作品である。


[570] RE:「ラニーニャの卵」招夏 Name:俊衛門 Date:2009/10/29(木) 23:13
視点が変わる方式にはやや苦労しましたが、軽い文体にも関わらず良く背景が練られたSFでした。生物の知識やら神の存在などを、語るのではなくさらっと小出しにしているあたり、読者が混乱せずにすんなりとその世界に入っていけるようにしてある。この辺、見習いたいですw 

参考文献に挙げておられた『生物と無生物のあいだ』ですが、自分も読みました。あれは面白いですよね、ってこれはレビューとは関係ないか……。


[632] RE:「ラニーニャの卵」招夏 Name:招夏 Date:2009/11/09(月) 00:31
 こんばんは〜招夏です。作者として読者としてチャット初経験者として空想科学祭楽しませていただきました。自分の中でも祭を終わらせる為に、ちょこっとだけこの場をお借りしたいと思います。
 まずは、天崎さん、黒木さん、主催および運営お疲れさまでした〜。

また、私の拙い小説にコメントをくださった皆様、票を入れてくださった皆様(いるか、いないかまだ知らないけど…(^^ゞ)、ありがとうございました。コメントでご指摘いただいた部分は、今後の執筆の「薬」とし、褒めていただいた部分は「燃料」として使用させていただきたいと思います。

以下、コメントへの返信です。

秋は戻り鰹さま

>一体いつ「SF」になるのだろう、と首を傾げるほど長い導入部
「ううっ」核心を突かれた気がします。私の小説は、いつも導入部が長いよな〜と自分でも思っているのです……なのにやっちまうんですよね(涙)。この悪い癖を克服するように頑張りたいと思います。また、「清々しい」と言っていただいて嬉しかったです。コメントありがとうございました。

ラヒチさま

>よほど軸をしっかりとさせていないと、読者の視点が定まらなくなるというデメリット
 はい、そのとーりです。実は最近多視点一人称に挑戦し始めたばかりで、さぞかし読みづらいものを読ませてしまったのだろうと項垂れています。せめて一話中では視点を切り替えるべきではなかったと反省しております。
 次に、改行のご指摘の点ですが、これはどうするべきか非常に揺れています。ご存じだとは思いますが、改行をしないとケータイ画面が非常に読みづらい訳です。これは、誰にどのような時に読んでもらいたいのかということを、もう一度考えなければならないのでしょう。もっとも私の小説はパソコンで読んでくださっている方が多いようなので、そちらが読みづらいのであれば、そちらに負担をかけるわけにはいかないし…でも、知り合いからは、横書きで読めば気にならないとも言われているのです。揺れています。いずれスタイルを決めたいと思います。
 コメントありがとうございました。

尚文産商堂さま

 ソーマの疑問「生き物は何のために存在するの?」は、当時まだ小学校の低学年だった息子から質問されたものでした。その時、私はその疑問にすぐに答えることができませんでした。「地球は神様が作った水槽で、神様が時々覗きこんでるんじゃない?」などと童話風に答えてみたものの、以来、私はこの質問の答えをずっと探しているような気がします。子供の質問って、時々はっとさせられますね(笑)。

栖坂月さま

「有機的ペレルマン」この言葉は、今回一番の宝物です。確かにペレルマン氏は孤高の人で、尊敬して当然な方なのですが、少々エキセントリックに過ぎるので(苦笑)、恋愛を絡ませること自体が不敬に当たる気がして設定からは外しておりました。だから雪村先生は分子生物学の准教授という設定にしてあります。でも、そうですね。有機的ペレルマンならぴったりだと思います。涙までいただいて(笑)、色々な意味でこっちが感動させられました。コメントありがとうございました。

中瀬美嘉さま

読んでくださってありがとうございました。改行と多視点については、既に触れましたので略させていただきます。実は中瀬さんのコメントが来ることに、一番ビビり、一番楽しみにしていたことを白状いたします。どんなふうに切り捨てられるのかと……(笑)
>一つ一つのエピソードが最後にぐっと効いてくる。
 これは嬉しい言葉でした。伏線を考えるのは楽しいことですが、それがどのように読み手に受け止めてもらえたのか知りたくてしょうがないというのが正直なところで、でも大抵そんなことは教えてもらえないことなので……嬉しかったです。コメントありがとうございました。

鳥野 新さま

ううう、うるうる。今回、一番痛かった情報です。一番懸念していて、この作品の生命線である部分の設定ミスですね。扱いは、マイクロピペットですか(号泣)ソンナキハシテタ。でも、正確な情報をいただいて良かったです。DNA(DNAポリメラーゼとドッグフード)とタンパク質(ドッグフード)と器となるコアツェルヴァトもしくはミクロスフェアを一緒にしたら生物ができたりして〜なんて軽く思いついて作った作品です。(ドッグフードに頼り過ぎだろ)でも、あ〜あ、失敗作です。真夏はともかく、准教授がしくじる訳にはいきませんからね〜。いずれ奇想天外な生命の作り方を思いついたら描きなおすかもしれません。はは。(笑って誤魔化そう!)コメントありがとうごさいました。

右野前条さま

コメントありがとうごさいました。中瀬さまに次いで、ビビりながらコメントを読ませていただきました(笑)
>生化学用語が乱舞するようなSF的重厚感はないが
やっぱりそーですよね。内容だけでなく、どうも私の文章は軽いようで……他所でもそのように言われているのです(苦笑)。今後どのような文章を書いていきたいのか、書けるようになれるのか、悩むところです。

導入部の長さ、視点切替についてのご指摘は、既に触れましたので略させていただきます。ご指摘ありがとうございました。

俊衛門さま

>軽い文体にも関わらず良く背景が練られたSFでした。
嬉しい言葉です。練るには練ったんですが、練りが甘かったようで……(苦笑)
「生物と無生物のあいだ」は本当に面白い本です。私は勝手に、この本のジャンルはサイエンスサスペンスだと思っています(笑)。コメントありがとうございました。



  


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